老舗の名店や高級デパートなどが並ぶ街、銀座。昔ながらの情緒あふれるゆったりとした時間が流れる街、新富町。この2つの街を結ぶエリアには、銀座の賑わいを背にして、下町風のリラックスした空気が流れている。この辺りは、古くは木挽町2丁目〜3丁目に属し、芝居町として華やいだ一画。その名残からなのだろうか、お行儀のよい銀座を横目に、ここにはもっと自由に、より自分らしい表情を見せる、個性豊かな構えの店がひしめき合っているのだ。とはいえ、場所柄、オフィスビルやマンションも集結。そびえ立つコンクリートビルの合間からひょっこりと、そんなお店たちがさりげない主張をもって顔を出す。そんな"共存風景"がおもしろいエリアなのである。
たとえば、「酒蔵秩父錦」(地図・3)という居酒屋。それは店名に載せた秩父の銘酒のみを供するこだわりの飲み屋だ。元は炭を売る燃料屋だったという日本家屋で、夜になると橙色の灯りが窓からもれ、古い建物がぼぅっと浮かび上がり、情緒ある風景を見せてくれる。しかし、店の正面に立ち、目を上に見やると、後ろには背の高いコンクリートビルがこの日本家屋を見下ろすようにすっくと立っているのである。ほかにも、古くから続く中華そば屋(地図・2)がオフィスビルの隣にのれんを下げていたり、マンションの1Fに南シチリア料理を出すイタリアンが旗を出していたり、丁寧な仕事がされる手焼き煎餅屋が軒を構えていたり、それぞれの立地のあり方はかなり特徴的でおもしろい。
また、店のジャンルが幅広いのも楽しい。トラットリア、ピッツェリア、ワインバー、カフェ、しゃぶしゃぶ屋、居酒屋、カレー屋、コロッケ屋(地図・1)、さらには畳店に足袋屋(地図・10)まで。それこそ、寿司屋(地図・8)と和食ダイニング(地図・9)とフレンチビストロ(地図・7)が並んでいる通りまであり、そんな店と店の"共存風景"も見ることができる。そして、それらすべてに共通しているのが、こだわりがあるのに、気取らない入りやすいお店ということ。ここに流れるゆるやかな空気が店を育て、そんな店が働く人、暮らす人を支えているのだろう。そう思えるエリアなのである。