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私は1990年代の初頭、アメリカで大学に通いながら働いていたのですが、ちょうどその頃、オフィスに対する考え方の変化が起こっていました。日本ではオフィスを働く人々が集まる「場所」として捉えられていると思うのですが、この時、アメリカでは、オフィスは、いい仕事をするための「ツール」である、と定義したトライアルが始まったのです。オフィスへの投資を単に経費としてではなく、生産性を上げるための手段として考えるようになった。いいアウトプットは、いい環境から生まれてくる、ということです。

コーネル大学のフランクリン・ベッカーが「カフェテリア・スタイル」というオフィスを提唱します。それは、オフィスに固定的な自分の場所を持つのではなく、カフェテリアを使うように、そのときの気分や状況によって、働く場所を能動的に選択しよう、仕事の種類によって最適な環境を自ら見つけるべきだ、というものでした。
それがさらに進化したのが「トータル・ワークプレス」です。それは言葉の通り、ワークプレイスを、ミーティングをしたり、考え事をしたり、雑談をしたり、集中して書き物をしたり、プレゼンテーションをしたり、その多様なアクティビティの総体として再構築しようという呼びかけであったと思います。
この論文が発表されたのが1993年、そういった考え方が日本で、にわかにリアリティを帯始めるのは1995年頃、インターネット元年と呼ばれる年です。
ちょうどその頃、ある大手フランチャイズのファミリーレストランに「あなたのレストランをオフィスとしても使えるようにしませんか」と提案したことがある。その時は、キョトンとされました(笑)。でも2003年の今ならば理解してもらえるんじゃないかと思います。実際、そうなっているカフェをたくさん目にすることができますよね。





仲さんの研究室・テレビ会議中





机にコンピュータの画面が写し出される




シャイ・アット・デイという広告会社がアメリカにあります。アップル社などの広告表現を手掛け、クリエイティブには定評のある企業です。そして、そこは自らのワークスタイルという分野でも、新しい表現を打ち出し続けています。オフィスが企業姿勢を表す媒体にもなっているわけです。例えばLAのオフィスは、巨大な工場を改装したものですが、その中には「セントラルパーク」という名の小さな公園があり、バスケットリングなんかがあります。オフィス中央を走る「ストリート」の両方にはコンテナのようにワークルームが積み上げられ、その壁面には巨大なポスターが貼ってある。各人の広告作品です。公園と通りと看板……、このオフィスは都市を構成する要素で成り立っています。
また、ノテル・ネットワークという企業のオフィスは、まさにそのまま「シティ」と呼ばれています。これらのオフィスは、都市をアナロジーにして考えられています。

逆に、オフィスの機能が都市に溶け出すという現象も起きています。例えば、キンコーズのようなショップはその端的な例でしょう。最近はハードだけではなく、その場所で活動する権利を販売するといったビジネスも始まっています。空間や設備ではなく環境やサービスを売るのです。都市のさまざまな場所に、オフィス的な場が散在し始めています。誰もが街中を飛び回りながら仕事をするわけではありませんが、そういったインフラの整備で都市のオフィス化も進展するでしょう。アメリカでは象徴的なことが起こりました。連邦政府がSOHO化(Small Office Home Office)に着手したのです。役所の仕事さえも可能なものは自宅で、というわけです。もちろん経費削減案の一貫ですが、この動きはSOHOをさらに一般的なものにするでしょう。ワークプレイスが拡散は、さらに進展していくことになると思います。


私が今注目しているのは、オフィスと都市の中間領域です。オフィスと都市の間のインターフェイスとも表現できるかもしれません。オフィスが都市化し、都市がオフィス化している今、それをつなぐ空間が重要であると思うのです。
いくつかの企業が実験を始めました。1階部分を公開する。ロビーというようなものではなく、美術館やカフェのように、よりパブリックに開いたものです。
そこは、外から来た人も働くことができれば、社内の人間も働くことができる。プライベートとパブリックの中間的な機能を持っています。それは、社員とマーケットとの直接的な接点で、マーケティング的な意味合いも持っている。そういう場だからこそ、人が集まり、生の情報が生まれ、流通するのです。
そのいくつかのプロジェクトに私も関わっています。ワークプレイスを巡って、今後さまざまなトライアルがなされていくでしょう。楽しみにしていて下さい。








プロジェクターを使っての会議中



仲隆介(ナカ リュウスケ)

プロフィール:1957年生まれ。東京理科大学院卒業。PALインターナショナル一級建築
   士事務所、東京理科大学建築学科助手、マサチューセッツ工科大学客員研究員(フ
   ルブライター)。宮城大学事業構想学部講師を経て現在に至る。アメリカ留学中は
   情報化の建築都市への影響、欧米の新しいオフィスの動き等を調査。日本建築学会、
   日本ファシリティマネジメント協会などで、建築の情報化、FM、オフィス等に関
   する活動を続ける。

著書・論文等:『変化するオフィス(共著)』、丸善
   『シティ・オブ・ビット(共訳)』Willium.J.Mitchell著、彰国社
   「情報革命が建築・都市を変える」、建築文化特集、彰国社
   『ファシリティマネジメントガイドフブック(分担執筆)』、日刊工業
   「アメリカのオフィス革命と新しいFMの動き」ファシリティーマネジメント、
   他多数



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